特集2024.04.24

~グローブ100個持つ草野球人~ こだわりのグローブを再生へ、草野球に懸ける想いとグローブの再生過程に密着取材!!

観賞用ではなく全て試合で使うのがポリシー。グローブはしっかり掴む内野手用、ウェブはバスケットが好み

Victoria創設から14年の間、これまで数多くのグローブ好きの草野球人を見てきたが、遂にグローブを100個持つ選手が実在した。その選手とは大会創設初年度から参戦を続け、30年以上の歴史を持つ強豪、ジョルターヘッズ壮年チームに在籍する二見智章選手である。我々は噂を聞きつけ二見選手へのロングインタビューを行ったが、正確には120個のグローブを所有し、主に内野手用のグローブを持っているとのこと。そんな二見選手のこだわりを聞いてみると、グローブは「当てて捕るより芯を深くしてボールをしっかり掴む内野手用」を主に使い、ウェブはバスケットが一番好みでH型や十字型のグローブも多く持っているという。決してグローブは観賞用のように使わないわけではなく、試合ですべてのグローブを使いまわし、2023年は120個のグローブを全部使い切った。今現在も購入は続けているとの事だが一つ一つのグローブに対して深い愛情を注いでいる。

イニングごとにグローブを変える徹底ぶり。グローブと会話をしながらその日に使うグローブを決める

年間を通して100個以上のグローブを使い切るには「1試合に1つ」では使い切れない計算だが、二見選手は我々の想像の遥か上を行く高いモチベーションで草野球に取り組み「イニングごとにグローブを変えている」という強いこだわりも持ち、平日から週末に使用するグローブのことを常に考えているそうだ。時には会社から帰ってきても食事をとらずにグローブと戯れるとの事だが、試合当日になるとグローブと会話をしながらその日に使うアイテムを決める。表現には少々癖があるが「グローブも女性だと思って、女性を選ぶのと同じように可愛いグローブを選ぶ(笑)」と人一倍の強い愛を語ってくれた。余談ではあるが二見選手にはご家庭もあり、その陰にはご家族の深い理解があって週末の草野球を迎えていると推測するが、こんなにも草野球、そしてグローブに熱い情熱を注ぎ、家庭はうまく回るのか若干心配するレベルである。

27個のアウトすべてを自分のグローブで捕りたい。参考にしてる選手は元ヤクルトの宮本慎也氏

ここまでグローブへの愛を多く語ってくれた二見選手だが、野球センスも抜群の草野球人で、Victoria壮年大会では高い守備能力を見せてくれた。経験豊富な選手だけあって「常に自分のところに打球が飛んで来い」と思っているという鋼のメンタルを持ち、更には「27個のアウトすべてを自分のグローブで捕りたい」と語るなど、グローブ愛はもちろん野球愛も並大抵ではない。堅実な守備とシュアなバッティングが持ち味の二見選手が参考にするプロ野球選手については、元ヤクルトスワローズの宮本慎也氏の名前を挙げ、「決して派手さはないが、当たり前のプレーを当たり前にするプレイヤーとして宮本さんは最強だ」と力強い言葉で語ってくれた。我々としてもプレースタイルが似ている印象を受けたが、楽しそうに野球をするという意味でも共通点を感じられた。

Re-Birthはグローブ好きにとってのディズニーランド。厳選した中よりこだわりのグローブを再生へ

まだまだ草野球とグローブについて話が尽きない二見選手だが、昨年初開催されたVICTORIA MASTERS CUPにおいて二見選手は特別賞を受賞し、今回はその特典として大会の特別協賛を務めてくれた『野球グローブ再生工房Re-Birth 』で、デザインリメイクを実施するためRe-Birth蒲田店に訪れた。再生グローブから新品まで豊富に取扱う店内を見渡し「グローブ好きにとってRe-Birthはディズニーランド」と表現し、店内の隅々まで楽しげに物色した。デザインリメイクはグローブの「すべての紐」と「外側と内側をつなぐヘリ革」を交換するメニューで、二見選手は各19色ある中から好みのカラーを選び、今回はリメイクの再生過程にも密着した。 『グラブマスター』と呼ばれるリバース独自のグラブ職人は、まずグローブの分解から始め、紐をすべてほどいてからグローブの小指と親指部分に入る芯材を外し、ヘリ革も丁寧に分解する。細かい作業にまで目を凝らして見ていると、ヘリ革に縫い付けられていた糸も残すことなく外し、リメイク序盤から作業の丁寧さをうかがい知ることができた。

器用さより忍耐力が必要なグラブ職人。今後は『グローブ工房』から『グローブ工場』を目指していく

次の工程は一度分解したグローブのクリーニング作業で、グラブ職人は専用の汚れ落としで隅々まで手を伸ばし、普段手の届かない箇所についても念入りに汚れを落とす丁寧な仕事ぶりは目を見張るものがあった。そしてここからミシンを使ったヘリ革の縫い付け作業に入り、専用の糸で一箇所ずつ丁寧にミシンを動かす。 ちなみに今回の密着で作業を行っていた阿部さんは20代前半の男性グラブ職人で、我々取材スタッフは手先の器用さに驚かされたが、Re-Birth代表の米沢谷氏は「グラブ職人を育成する環境は整っているので、器用さより同じ作業を繰り返しおこなえる忍耐力が必要」と自らが立ち上げた工房を語り、今後は一人のグラブ職人が一気通貫で作業を行う『グローブ工房』からリメイクの各作業工程を細分化した『グローブ工場』を目指していきたいと言う。(定期的に採用活動をしているので詳しくは採用情報へ)

ヘリ革は派手にゴールド、紐はシックなブラックを選択。世界にひとつだけのデザイングローブが完成

話を戻すと今回二見選手が選択したヘリ革はゴールドで、派手さが目立ちそうな仕上がりを予想したが、同系色だけあって茶系のグローブにもよく馴染んでいる印象だ。そして作業は終盤を迎え、次にグローブの表革と裏革をつなぐ「接着剤的な役割を果たすグリス交換」を行うとグローブにもハリが蘇り、最後にすべての紐を通していく。紐はシックなブラックを選択したが、紐通しの工程も一つ間違えるとやり直すことになるので、ここでも慎重に作業を進め、すべての紐を通して仕上げに専用のオイルで栄養を補給し、世界にひとつだけのデザイングローブが完成。振り返ってみると数時間に及んだグラブ職人の作業一つ一つが本当に丁寧で、技術はもちろんのことグローブへの愛情を注ぎ込むことで、魅力的かつ職人の思い入れのあるグラブへと生まれ変わった。

手のひらに吸い付くようなグラブへ劇的変化。作業が丁寧でおススメの野球グローブ修理・リメイク専門店

出来上がったグローブは今回我々が自ら二見選手のもとへ届けに行き、まずは感謝の気持ちをRe-BirthとVictoriaに述べてくれた。少し興奮気味に蘇ったグローブをはめてみると「全体的に手に馴染むようになった。作業が丁寧でグローブの革も一つ一つ丁寧に磨いていただき、本当に手のひらに吸い付くようなグローブに生まれ変わった」とRe-Birthのリメイクを大絶賛していた。 「初めてグローブを買った時のような少年のような気持ち」だと二見選手は何度もグローブの感触を確かめていたが、さすが100個もグローブを持つ草野球人だけあって「平裏のラインにいい硬さとハリが蘇って、ボールがスムーズに入ってくる感覚」と細かい箇所にまで触れていたが、これはグリス交換に秘密が隠されていて、これにより捕球面もしっかりと形成され、より確実な捕球が実現できるのだ。(グリス交換は1年~1年半に1回は交換を推奨) 最後に二見選手とはキャッチボールを行ったが、生まれ変わったグローブを何度も見つめ童心に帰ったかのような表情を見ると、大会を運営する者としても喜ばしい気持ちになった。最後にこの様な機会を設けていただいた野球グローブ再生工房Re-Birthには心からのお礼を伝え、SDGsパートナーとして今後も価値のある取り組みを続けて行きたい。(前回の記事では56歳の草野球人を特集しています

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