TEAM	1	2	3	4	5	6	7	R
PIECE	0	0	1	0	0	0	3	4
佐  川	1	0	0	0	0	0	2	3

上空に厳しい寒気が居座る1月9日。感染症予防対策として異例の無観客試合となったVictoriaファイナル2020。そんな中、聖地・明治神宮野球場を舞台に行われるファイナル初日のオープニングゲームを飾ったのは「PIECE × 佐川グローバルロジスティクス」のスプリングカップ決勝戦である。 戦いの先攻は2018年のオータムカップ優勝以来、2年ぶりに決勝の地に戻ってきたPIECE。スプリングカップでは3年前に準優勝の経験がありそのリベンジに燃えているPIECEの魅力は、打てなくても焦ることなく我慢し続け、相手のミスにつけ込み全員野球で勝利を掴み取ることである。そんな選手層が厚いチームを牽引する扇の要の櫻井（健）は「素晴らしい舞台でプレーできることに感謝しています。チームが勝つことにこだわって全力を尽くします！」と謙虚に意気込みを語った。 対する後攻の佐川グローバルロジスティクスは、Victoria参戦2年目ながら早くも聖地に乗り込んできた。会社の大きな看板を背負い戦う彼らの魅力は、どこからでも点が取れる打線とベンチワーク、緩急自在に配球を組み立てるバッテリーである。強肩強打のユーティリティプレーヤーで在りながら、チームのムードメーカーも務める一林は、吉報を待つ全社員の期待に応えられるようVictoria初のタイトル獲得に向け「何が何でも勝ちます。」と熱い一言を放った。 今年のオータムカップ3回戦以来の顔合わせとなった両者。その試合は佐川グローバルロジスティクスのエース奥谷が中盤に制球を乱し、奥谷に代わった鈴木も不運な打球に見舞われ7－1でPIECEに軍配が上がった。佐川グローバルロジスティクスのリベンジマッチともなったこの一戦は、まだ日が昇り切らない午前8時に試合開始となりゲームは初回から動きを見せた。 1回表、PIECE先頭の高野が四球で出塁し佐川グローバルロジスティクス先発の古家が警戒する中、高野は初球に盗塁成功。その後2番の桑原（南）が進塁打を放ち1アウト3塁とチャンスを広げ、PIECE打線が古家を初回から攻め立てる。ここで打席に立つのは3番の斉藤。カウント1-1から迎えた3球目、エンドランのサインか打者の斉藤は空振り、3塁ランナーの高野も飛び出しタッチアウトとなり、チャンスを作るものの無得点で初回の攻撃を終えた。 ファイナル独特の緊張感の中で、見事に無失点で切り抜けた佐川グローバルロジスティクスは1回裏、切り込み隊長である大杉がセンター前に落ちるヒットを放ち、こちらも先頭打者が出塁。PIECE先発の横田が盗塁を警戒する中で大杉は2球目に盗塁を決め、互いに1番打者が揺さぶりをかける。続く2番須永はサードへのバントヒットでノーアウト1、3塁としチャンスを広げると、迎えるは3番の吉田。ここで2球目に1塁ランナーの須永がスタートを切るが、PIECEの櫻井（健）が盗塁を阻止し先発の横田を援護する。積極的な攻撃で先制点を狙う佐川グローバルロジスティクスはなおも攻撃の手を緩めず、カウント2-1で迎えた4球目に吉田が1塁線にセーフティースクイズを決め、3塁ランナーの大杉がホームイン。準決勝と同様に佐川グローバルロジスティクスが電光石火の先制劇を披露し、試合は初回から見応えのある展開となった。 初回から互いにチャンスを作り打撃戦も予想されたが、2回は両チームの先発が踏ん張り迎えた3回表、何とか同点に追い付きたいPIECEはこの日8番に座った井上が初球に3塁線にセーフティーバントを決め、すかさず盗塁。続く9番白石がピッチャー前にバントをすると、この打球を古家が3塁へ投げるもサードの森のグラブを弾き、ノーアウト1、3塁と佐川グローバルロジスティクスはピンチを広げる。この場面で打席に立つのはPIECEの元気印1番の高野、カウント1-1で迎えた3球目、打球はセカンドに転がりゲッツー崩れの間に3塁ランナー井上が生還し、1対1と試合を振り出しに戻した。 4、5、6回PIECEはいずれの回もチャンスを作るが得点に結び付くことはなく、一方の佐川グローバルロジスティクスは3回まで投げ抜いたPIECE横田、4回より登板した青野を前に2回以降塁に出ることはなく、PIECE自慢の投手陣に翻弄された。 4回以降は両者無得点で試合は進み、大会規定により1アウト満塁のサドンデスマッチとなった7回表、佐川グローバルロジスティクスは6回1失点、球数101、被安打3、四球6とここまで粘りの投球を魅せてきた古家に代わりエース奥谷が満を持して登板。チームの期待を一身に背負い、いきなり迎えた絶体絶命のピンチを切り抜けようと魂のこもった投球を披露するが、PIECE先頭の高野に対する3球目、ベース手前でワンバウンドした球を捕手の一林は押さえきれず、痛恨のワイルドピッチで2対1と勝ち越しを許す。さらに桑原（南）がレフトへの2点タイムリーヒットを放ち、PIECEが4対1とリードを広げる。 7回裏、3点を追う佐川グローバルロジスティクスはこの回先頭の吉田が三振、続く主砲の伊藤は2球で2ストライクと追い込まれ、このまま試合終了かと思われたが、ここで終わらないのが過去に数々の激戦をモノにしてきた佐川グローバルロジスティクス。4回からマウンドに上がりパーフェクトピッチングをしてきた2番手の青野から伊藤はレフトへの鮮やかな2点タイムリーヒットを放ち、土壇場で1点差とする。緊迫の場面で打席に入るのはDH解除により5番に入った奥谷。2アウト1、2塁カウント1ストライクからの2球目を打ったが無情にも打球はサードの正面に転がり、斎藤が落ち着いて3塁ベースを踏みゲームセット。PIECEがサドンデスにまで縺れた死闘を4対3で勝利し、2年ぶり2つ目のタイトルを獲得。MVPには4打数2安打2打点の活躍で最終回にダメ押し打を放った桑原（南）が選ばれた。 ゲーム後、優勝インタビューに答えた柴代表兼監督は「チャンスを何度か潰してしまってベンチの中では悪い空気が流れていたのですが、勝ちたいという気持ちが1人1人にあったので最後良い結果で終われたのかなと思います」と試合を振り返り、45分後に行われるサマーカップ決勝については「まず1つ獲れたので今日の目標とする2つ目を楽しみながら獲りに行きたいと思います」と史上3チーム目となる2冠に向けW優勝宣言をしてくれた。 惜しくもチーム初タイトル獲得を逃した佐川グローバルロジスティクス。PIECE投手陣の前に3安打と攻略できず自分たちの野球をさせてもらえなかったが、最後まで諦めずに戦い抜きサドンデスで1点差まで追い上げたその姿は、社員の枠を超え全野球人に勇気を与えたことだろう。悲願の初優勝に向け、来季もこの地に返り咲くことを期待したい。