TOP > Victoriaリーグ3部(2022年) > バックナンバー > 「参戦4年目のNITOROが最激戦区3部リーグ制覇!!」
過去最多93チームの頂点はNITORO!川上がシーズン同様に気迫の投球見せる!!
前日の晴天から比較すると少し曇り空が広がった12月11日、午前8時30分。決戦の地・明治神宮野球場ではVictoria各リーグの王者を決める4試合が開催され、この日のオープニングゲームを飾ったのは「NITORO × インソムニアスターズ」の3部リーグ決勝戦である。
戦いの先攻NITOROは、2014年に大田区で活動していた65ersを引き継ぐ形で監督の滝澤と共に結成された。Victoria参戦4年目にして激戦区のファイナルにまで登りつめたチームは、Max138キロのストレートを投げる絶対的エースの川上、攻撃面では走攻守三拍子揃った山下(舜)を中心に下位打線にも俊足巧打の山下(聖)、嘉数、直井が控えるなど抜け目の無い打線が特徴で、滝澤監督を胴上げすることを目標にチームは虎視眈々と初優勝を狙う。
対する後攻は溯ること4年前、3部リーグにおいて3試合不戦敗と奈落の底にまで突き落とされながらも絶望の底から這い上がり、今季7年越しに悲願のプロスタ切符を手に入れたインソムニアスターズ。攻守に共通し『ここぞの勝負強さ』と『流れに乗る力』には自信があると代表の深山は語る。エース坂東、守護神西本を中心にピンチを乗り切り流れを引き寄せると、その流れに野手が応え数少ないチャンスを掴むのがチームのスタイルであり、ここまで僅差の試合結果がそれを物語っている。怖いもの知らずの若手とベテラン勢が融合しチーム結成の2009年から苦節13年、初タイトルを目指し決勝の舞台に挑む。 そんな初タイトルを狙うチーム同士が神宮の舞台で戦いを繰り広げる事となった決戦の火蓋は、午前8時30分福田主審のプレーボールによって切って落とされ、ゲーム序盤は両チーム得点圏にランナーを進めるもあと一本が出ず、静かな立ち上がりとなった。1回表まず守備についたのはインソムニアスターズ、この日も先発のマウンドにはエース坂東が上がる。晴れの舞台にやや緊張した面持ちで大役を務める中、先頭のNITORO木内はフォアボール、続く2番の夏目はピッチャーゴロに抑えるも2塁悪送球で自らのミスで早速ピンチを迎える。しかし数々の修羅場をくぐってきた女房役の捕手中村はここでタイムを取って一呼吸を置き、坂東にも笑顔が見られ冷静さを取り戻す。ノーアウト1,2塁で迎えたのはNITOROの元気印、プレイングマネージャーの滝澤。最低でも進塁打が欲しい場面ではあったが、滝澤はピッチャーゴロに倒れサードフォースアウトで1アウト、そしてこの場面でインソムニアスターズにビッグプレーが飛び出した。打席には4番の高橋が向かい、カウント1ボール2ストライクからの3球目。高橋は真ん中に甘く入った変化球をフルスイングするも、やや力んで当たった打球はキャッチャー左の小フライに。捕手の中村はすぐさま反応し、ダイビングキャッチでしっかりとボールを掴み2アウト。インソムニアスターズの大応援団もこのビッグプレーに大きな歓声を上げ先発の坂東も勢いに乗ると、続く5番の長井はサードゴロに抑えスリーアウト。インソムニアスターズは初回からノーアウト1,2塁のピンチを迎えたが、見事に無失点で切り抜けた。
1回裏、先制のチャンスを逃したNITOROは絶対的エースの川上がマウンドに上がる。川上は対照的に大舞台でも普段通りの投球を披露し、1番の臼田は1ボールからセンター正面のライナーに打ち取り1アウト、続く2番高桑はセカンドゴロに抑え簡単にツーアウトを取る。しかし注目選手の3番秋山の打席、川上はここでも簡単にショートゴロに打ち取るもショート嘉数が捕球体勢を崩されながら送球したボールはツーバウンドとなり、これをファーストの滝澤は抑えることが出来ずランナーを2塁へ進めてしまう。続く中村に対しては初球をワイルドピッチと3塁へランナーを進めるが、この場面でもマウンドの川上は冷静さを保ち、最後は3-2からアウトローの変化球でタイミングを外して空振り三振。川上は味方のミスから生まれたピンチも動じることなく、初回を無失点で抑えた。 その後2回も両チーム無得点で試合はテンポよく進み迎えた3回表、ここで試合が動き出す。この回は2アウトから夏目がセンター前のクリーンヒットでチャンスを演出すると、続く滝澤がサードへ強い打球を放ち、これをサードの八巻がセカンドへ送球するも間一髪でセーフ、更にファーストもセーフのオールセーフでランナー1,2塁の場面を迎える。そして打席に立つのは主砲の高橋、4番としての責務をしっかりと果たしたい高橋は坂東が投じた初球インコースの変化球を上手く捌き、レフトオーバーのタイムリーツーベースヒット。1塁走者の滝澤は惜しくも3塁タッチアウトになるも2塁ランナーの夏目は生還し、NITOROがゲームの均衡を破る1点を先取した。
攻撃からリズムを掴んだ川上は、バックの堅い守備にも助けられ3回裏も無失点で切り抜ける。このままNITOROペースで進むかと思いきやNITOROは4回裏に再びピンチが訪れ、味方のエラーとインソムニアスターズ6番池田のヒットでツーアウトながらランナー2,3塁と一打逆転のピンチを迎える。NITOROエース川上はここで気を引き締め簡単にツーストライクに追い込むも、インソムニアスターズの7番八巻もファールで粘りフルカウントまで持ち込む。見応えのある意地とプライドがぶつかった真剣勝負にスタンドからも熱い眼差しが送られる中、川上が投じた6球目。低めに沈むボール球に八巻のバットは空を切り空振り三振でスリーアウトチェンジ。相手打線にヒットを打たれるもコースに投げ分ける投球でインソムニアスターズに反撃の機会を与えず、このピンチを切り抜けた川上はマウンド上で雄叫びを上げた。 続く5回表、インソムニアスターズは2番手として西本がマウンドに上がる。一方のNITOROは8番山下(聖)、9番嘉数が連続四死球でランナー1,2塁とすると、更に1アウトから夏目も四球で出塁し満塁と大量得点のチャンスを迎える。この場面で打席の滝澤はサードゴロを打たされるも、この打球をサードがファンブル、NITOROは中盤で貴重な追加点を挙げて3-0とし、先発の川上を援護する。インソムニアスターズは満塁のピンチが更に続き、この場面で打席に立つのは、前の打席でタイムリーを放っている高橋。バッテリーも警戒する中、高橋は2球目の変化球に上手くタイミングを合わせ、打球は三遊間を抜ける2点タイムリーヒットとなり4-0、このイニング3点を追加したNITOROは勝ち星を手堅く引き寄せる。
その後はNITORO川上が5回、6回と無失点に切り抜け、インソムニアスターズも5回途中から西本の後を引き継いだ秋山が6回も無失点、更には7回から4番手でマウンドに上がった三枝もナイスリリーフと最後の攻撃に望みを繋げる。
そして迎えた7回裏、後がないインソムニアスターズは怒涛の反撃を魅せることとなる。この回からNITOROマウンドには先発の川上に代わり、クローザーとして主将の山下(聖)がマウンドに上がる。インソムニアスターズは何が何でも先頭を出塁させたいこの場面、打席には好リリーフを務めた三枝が向かい、山下(聖)が投じた5球目の変化球をジャストミート。打球はぐんぐん伸びセンターを越えるツーベースヒットとなり先頭が出塁する。ノーアウト2塁から八巻はピッチャー左に意表を突くセーフティーバントを決め内野安打と、続く畑山は内野ゴロに倒れるも1アウトでランナー2,3塁と絶好の得点機を迎える。この日3度目の得点圏にランナーを進め、是が非でも1点を奪ってチームに勢いを与えたいインソムニアスターズ、打席には9番の柴田が向かった。一方のNITOROも得点を与えたくないこのシーン、インソムニアスターズの逆転劇に期待し球場のボルテージも最高潮に上がり山下(聖)が投じた3球目、柴田はやや甘く入った変化球を完璧に捉えセンターオーバーの2点タイムリーツーベースヒット、2-4と土壇場で2点差に追い上げた。そして柴田を2塁に置きホームランが出れば同点とインソムニアスターズベンチは盛り上がりを見せるも、NITOROの山下(聖)はピンチを迎えても動じることなく、冷静な顔つきで投球を続ける。すると山下(聖)は続く日吉をセカンドフライ、2アウトとなり高桑をフォアボールで出塁させるが、最後は秋山が無情にもピッチャーゴロに倒れゲームセット。最激戦区の名にふさわしいゲームの結末はNITOROに軍配が上がり、見事に史上最多93チームの頂点に立った。 そしてMVPには6回無失点の川上が選出され、大会オフィシャルパートナーのローリングスジャパンより大人気グラブのHOH®グラブが贈られた。ゲーム後、優勝インタビューを受けた滝澤監督は「もう一言、凄く嬉しいです!」と喜びを語った。2019年からVictoriaに参戦し、優勝するまでの過程を問われた滝澤は「マネジメントなどの面は自分がやるから選手たちは日曜日のために頑張って来て欲しいと、みんなで一致団結して頑張ってきた結果が、このような結果になったと思う」とチーム想いのコメントを残した。また来季の意気込みと目標について「相手がいることで、自分達は勉強をさせてもらう、胸を借りるつもりでやっているので、強いと言うよりは一つ一つのプレーをしっかりやっていくチームなので細かい野球をして、来年もこの場に立てるようにしっかりと調整して来年を迎えたいと思う」と語り、現時点の結果に甘んずることなく、さらなる高みへの挑戦を見据えた。一方、惜しくも初タイトル獲得とはならなかったものの、土壇場でビッグイニングを予感させるなど、最後の最後まで諦めることなく自分たちの野球を貫いたインソムニアスターズ。悔しさは残るが、チーム消滅の危機にまで陥っていたチームがこの準優勝と言う結果を手にしたことは大きな財産と言えるだろう。そして今日の敗戦が、インソムニアスターズにとって新タイトル奪取への糧となることを大いに期待したい。
【MVPインタビュー】#19 川上 拓馬
【監督インタビュー】#30 滝澤 隆司
試合動画、インタビュー動画はこちら ↑