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PHが待望の初タイトル!主砲小島の決勝弾に若きエース米望が圧巻の完封劇!!
曇り予報から一転、グランドには晴れ間も広がり野球日和となった12月11日13時30分。アマチュア野球の聖地・明治神宮野球場を舞台に行われるのは、Victoriaリーグ2部「PH × SCRATCH」の決勝戦である。
長きに渡りVictoriaリーグを牽引する常連組が激突することとなった戦いの先攻はPH、この日大会オフィシャルサポーターのファンゴ製ユニフォームを身に纏った彼らは、2015年に3部リーグ準優勝の実績はあるものの2部昇格後は苦しい戦いが続き、昨年はまさかの2部リーグ予選5位で姿を消した。しかし、結果には恵まれない中でも2年前のチーム再編後、新戦力メンバーも加わったことで選手層に厚みが増し、競争意識も高まったことでチームとして団結力がより一層生まれる結果となった。そして迎えた今季、長年エースとしてチームを支えたベテラン八木から米望がその座を譲り受け、八木の魂を継承した米望は年間通してマウンドを守り切り、7年ぶり2度目の神宮進出を決めた。代表兼監督の八木は「長年このチームを率いて来ましたが、間違いなく今が一番強い状態だと自負しています」と戦いを前に力強く語った。
一方の後攻SCRATCHは迷彩柄のユニフォームがモチーフで、2001年に結成し幸山監督が学生時代に過ごした同期で立ち上げた集団は、その後信頼を置く後輩や活きのいい若手が加入し、今は平均年齢30歳と草野球経験豊富な選手が多数在籍する。Victoriaには創設初年度から参戦し、最高成績は2018年に2部リーグ3位と好成績を収めた実績はあるが、プロスタにはあと一歩届かなかった。しかし今季、他大会でも実績を積みVictoriaでも予選2位通過ながら決勝トーナメントで強豪を次々と撃破し、準決勝のSTBC戦では0-0のまま進んだ最終回裏の攻撃、1死満塁から8番神谷のサヨナラヒットで13年越しの悲願を叶え、神宮ファイナル進出を決めた。戦いを前に「1番伝えたいことは、美人マネージャー募集しています(笑)」とユーモアのあるコメントを残したが、相手を油断させるコメントで隙をつき虎視眈々と頂点を狙う。 互いにVictoria初タイトルが懸かり熱い視線が集まる中、中原主審の試合開始を告げる威勢のいい声が神宮の杜に響き渡り、試合開始直後に息つく間もなく快音がグランドに響き渡る。1回表、SCRATCHの先発マウンドには山上が上がる。セットポジションからややスリークォーター気味にテンポよく投げ込み、PH1番の贄は3球目に左中間へ鋭い当たりを放つもレフトの守備範囲で1アウト。続く2番鹿本はピッチャーゴロで簡単に打ち取り2アウト、しかし3番の神原にはフルカウントまで持ち込まれると、神原は粘りを見せフォアボールで出塁する。2アウトランナー1塁から迎えるのは4番の小島、この後グランドが騒然とする一打が飛び出した。打席の小島は全神経をピッチャーの山上に集中させ、獲物を捕まえる獣のような鋭い眼光を見せる。すると山上が投じた初球、キャッチャーの神成は小島を警戒してか外に要求するも、山上の変化球は肩口から甘く入り、このボールを小島は見逃さずフルスイング。打球はライナー性の打球で神宮のスタンドにめがけて一直線、レフトは痛烈な打球に途中で追いかけるのを止め、矢のような打球はレフトスタンドに突き刺さるツーランホームラン。PHベンチはこの一打で大舞台の緊張からも解き放たれ、初回から試合を優位に進めることとなる。
1回裏、PHの先発は今季フル回転のエース米望がマウンドに上がる。追う展開となったSCRATCHは先頭の相羽が初球から豪快なスイングを披露するも5球目を打たされサードゴロで1アウト。続く2番加藤は4球目低めの変化球に空振り三振で2アウト、米望もSCRATCH山上と同様にセットポジションからテンポよく2人を抑え、3番のセンター小林は初球高めの変化球を打たせ、ライト正面のフライに倒れ3アウトチェンジ。 PHは攻撃から掴んだリズムを守備にも活かし1回裏を3人で切り抜けると続く2回表、SCRATCHは早々とバッテリーを交代させ、ピッチャーに片岡が入り、キャッチャーにはレフトから加藤がマスクを被る。マウンドに上がった片岡は威力のある直球と切れ味鋭い変化球で打者を手玉に取り、先頭の6番松野は粘りに粘った10球目、最後は低めのストレートを見逃し三振で1アウト。続く7番伊藤は2球目をショート上原の左に転がし、打球は上原のグラブをかすめ内野安打で出塁する。しかし片岡は後続を力でねじ伏せ、8番の棚澤は2ストライクからアウトローの直球を見逃し三振、9番福本は片岡の直球に力負けしサードフライに倒れ3アウトチェンジ。片岡はPHに行きかけた流れを渡すまいと好投を見せる。
続く2回裏、早い段階で同点に追いつきたいSCRATCHは、この回チャンスを迎える。先頭の4番菅原はサードゴロに倒れ1アウトとなるも、5番の上原はボール球をしっかり見極めフォアボールを選び、この試合初めてランナーが出塁する。SCRATCHは好投手の米望相手に少ないチャンスを活かそうと6番幸山(大)の2球目、ファーストランナーの上原がスチールを仕掛ける。すると米望が投じた直球はキャッチャー手前でワンバウンドし、捕手の棚澤はこれを掴み切れずスチールを許し、SCRATCHは得点圏にランナーを進める。打席の幸山(大)は監督としてもここで1点を取り、一気に流れを引き寄せたいところであったが、最後はアウトコースの直球に手が出ず見逃し三振で2アウト。なおもチャンスは続くが、7番神成は初球真ん中の甘い球を打ちにいきセンターへ運ぶも、打球はセンター福本がしっかりグラブに収め3アウトチェンジ。SCRATCHは初めて迎えた得点機にも米望を打ち崩せず、この回も無得点に終わる。 3回表PHの攻撃は1番から始まる好打順、贄はファールで粘り最後は低めの直球を見極めてフォアボールで出塁する。続く鹿本の打席の2球目、1塁ランナーの贄が盗塁を仕掛けると、キャッチャーの送球が一瞬遅れ盗塁成功。ノーアウトランナー2塁のチャンスを迎え追加点が欲しいPHであったが、鹿本は低めの変化球に体勢を崩されショートフライで1アウト。このピンチで更にギアを上げたSCRATCH2番手の片岡は、神原をフルカウントから渾身のストレートで空振り三振に仕留め2アウト。この間に2塁ランナーの贄が盗塁を決め、2アウトながらランナー3塁で前の打席にホームランを放った小島を迎える。SCRATCHバッテリーは最大級の警戒をして低めを丁寧に突き、カウント2-2から小島は片岡のストレートに差し込まれ、セカンドゴロで3アウトチェンジ。SCRATCHは毎回出塁を許すもこのイニングも無得点に切り抜けた。
試合はテンポよく進み、SCRATCHは3回、4回と米望の投球を前に2イニング続けて三者凡退に倒れ、一方のPHも4回表に2死満塁のチャンスを作るが、SCRATCHの2番手片岡を前にこちらもあと1本が出ない。
そして迎えた5回表、攻撃でチャンスを作れないSCRATCHであったが、このイニングより3番手でリリーフした鷲尾が球場を沸かせるピッチングを披露する。鷲尾はセットポジションから威力ある速球を投げ込み、投球練習から130キロ台の速球を連発する。会場の雰囲気も剛速球に期待する中、プレイが掛かると更に力のこもった直球を投じ、PH先頭の鹿本に対して鷲尾は145キロの剛速球を計測した。このスピードガン表示に球場全体もどよめきを見せ、鷲尾もテンポよく投げ込む。しかし、打席の鹿本も鷲尾の剛速球に対してファールで合わせ、最後はカウント2-2からサードゴロに倒れるもサード神谷の悪送球で鹿本が出塁する。続く神原に対しては鷲尾の制球が定まらずフォアボールで出塁させ、ノーアウトランナー1,2塁とPHはチャンスが拡大する。ここで小島がこの日3度目の打席に立ち、3塁コーチャーズボックスから代表兼監督の八木がゲキを飛ばすも最後はライトフライに倒れ1アウト。マウンド上の鷲尾は更にピンチが続くも英、松野を変化球で内野ゴロに打ち取り、スピードのみならず巧みな投球術で好リリーフを魅せた。 5回裏、鷲尾の好リリーフで流れを引き寄せたSCRATCHは先頭に代打の薩美を送り、早々と2ストライクに追い込まれるも米望がアウトローに投じた変化球を片手一本でセンター前へ運び、ノーアウトでランナーが出塁。しかしマウンド上の米望もこの場面で動じることなく、7番神成をセンターフライ、続く8番神谷はフルカウントまで持ち込まれるもレフトフライで2アウト。9番の藤崎もフルカウントまで粘るも最後はライトフライに倒れ3アウトチェンジ。PH先発の米望も鷲尾の投球に刺激を受けたか、このイニングも無得点でSCRATCHにホームを踏ませない。
初回のホームラン以降はスコアボードに0が並び、6回も両投手陣が踏ん張りいよいよ試合は最終回を迎える。グランドは今にも雨が降りそうな曇り空で早くも球場の照明が灯される中、7回表もSCRATCHのマウンドには鷲尾が立ち、1アウトから味方のエラーでランナーを許すも後続を打ち取り、鷲尾は3イニングを無失点と完璧なリリーフで最終回の攻撃に望みを繋げる。一方のPHは継投策も考えられたが最終回のマウンドにも米望が上がり、先頭の菅原は1ボールからレフトフライに打ち上げ1アウト。続く上原はファースト正面のゴロに倒れ簡単に2アウト、そして打席に立つのは前の打席に代打で貴重なヒットを放った薩美。マウンド上の米望は完封を見据えて打席の薩美に集中するが、薩美も何とかして塁に出ようとフルカウントまで持ち込む。そしてカウント3-2から薩美はサードに強い打球を放ち、これをサードの松野がファンブルして薩美は出塁。最後の最後に迎えたチャンスにSCRATCHベンチはこの日一番の盛り上がりを見せたが、PH内野陣も一度マウンド上に集まり逸る気持ちを抑える。執念の内野安打を放った薩美に代わり代走で新行内(大)が入り、打席に向かうのは途中出場の小役丸。何とか次のバッターに繋いで同点のランナーとして出塁したいところであったが、最後は米望の変化球にタイミングを外され空振り三振でゲームセット。この結果、参戦8年目のPHが悲願の初優勝を飾り2部リーグのチャンピオンに輝いた。 ゲーム後、悲願の優勝を果たしたPHの八木監督は「好投手が揃っているチームだったので、どう攻略するかを第一に考えていたが、初回に4番の小島がホームランを打ってくれて勢いに乗れたので、先制点を取れたのが大きかったと思います」と会心の勝利に代表の八木は笑みを浮かべた。そしてMVPには初回にツーランホームランを放った小島が選ばれ「1年間苦しんだ分、しっかりとこの1週間準備をして臨んだ結果が出た」と最後は有終の美を飾り、こちらも満面の笑みを浮かべた。
一方ロースコアのゲームを演じるもPHの米望を打ち崩せなかったSCRATCHではあったが、初回のホームランを除けばその後のディフェンス面は完璧な内容だった。無得点のオフェンス面には課題は残るもこの悔しさは来季の1部リーグで晴らし、14年越しとなる悲願のVictoria初タイトル獲得に期待したい。
【MVPインタビュー】#9 小島 啓司
【代表インタビュー】#1 八木 丈文
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