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白熱の投手戦はサドンデス決着!予選に続き互角の接戦はNINE SENCEに軍配!!
この日は手に汗握る激闘が続き、球場はまだ興奮から冷めやらぬ中で迎えた1月9日午後13時45分。明治神宮野球場で行われたVictoriaファイナル2021、初日の第3試合はVictoriaリーグ2部 supported byファンゴユニフォーム決勝戦「我孫子フラワーズ × NINE SENCE」である。
戦いの先攻は今季エース伊藤が台頭し、予選から投手力を武器に勝ち上がってきた我孫子フラワーズ。メンバー構成は代表の北澤(京)と共に少年野球や高校時代を一緒に戦ってきたメンバーで形成し、甲子園出場や大学野球経験者はほとんど在籍しない公立高校出身者の集まりだが、ここまでチームワークを武器に強豪チーム相手に競り勝ってきた。決戦を前に代表兼監督の北澤(京)は「昨年の悔しい思いを胸にこの1年間楽しみつつ勝てるチーム作りをしてきました。少年野球時代からの最高の仲間と共に神宮球場で暴れたいと思います。」と神宮での躍動を誓った。
対する後攻NINE SENCEはVictoria初エントリーで強豪が集う2部リーグに参戦、そして初出場でプロスタ進出の偉業を達成した。組み合せ発表を見たときに「2部から参戦したことを後悔した」と語る彼らだが、我孫子フラワーズと同じく強豪相手に競り勝ちこの舞台に上り詰めた。 チームのムードメーカでもある国保は戦いを前に「試合前に飯を沢山食べて力を発揮したいと思います!」とチーム1.2を争う怪力男の神宮球場でのアーチにも期待がかかる。 予選同ブロックの千葉対決となった2部リーグ決勝は、中原主審の威勢の良いプレイボールで切って落とされ、試合は両投手陣の好投が光る手に汗握る投手戦となった。
1回表、NINE SENCE先発のマウンドに上がったのは準決勝で完封勝利を飾った野平。勢いのあるストレートを軸に変化球の制球も抜群の野平は、決勝戦も主役の座を掴もうと初回から全力投球を魅せた。先頭バッターとして打席に立つのは、我孫子フラワーズ不動のリードオフマン北澤(京)、今季数々の得点シーンを演じてきたが、4球ファールで粘り最後は見逃し三振で1アウト。続く2番佐藤(匝)と3番北澤(玲)はショートに転がし三者凡退と野平は上々の滑り出しとなった。
1回裏、対する我孫子フラワーズ先発のマウンドに上がるのはエース伊藤。整った顔立ちからは想像もできないマウンド度胸で勢いのある直球をテンポよく投げ込み、2021年シーズンの防御率は驚異の0.56と圧倒的な成績を残している。しかし伊藤は大舞台の緊張からか自慢のコーナーへの出し入れにやや精彩を欠き、NINE SENCEは初回から伊藤を攻め立てる。1番の日下部、2番の大野は簡単にアウトを取られるもNINE SENCE注目選手の3番角井はインコースの直球を引っ張りファースト強襲ヒット、鋭い打球を弾いたファーストの森川はボールの行方を見失いその間に角井はセカンドまで陥れ、2アウトランナー2塁と得点圏にランナーを置く。ここで迎えるは同じく注目選手として名前の挙がる4番石川が右打席に入る。初球キャッチャーの牧島は外寄りのボール球を要求、しかし伊藤の直球はやや内側に入り石川はそれを見逃さずジャストミート。打球は右中間最深部まで転がるタイムリー3ベースヒットとなり1点を先制、NINE SENCEは好投手伊藤を初回から攻略し、ベンチのムードも高まり最高の滑り出しを見せた。 しかし我孫子フラワーズも相手に試合の主導権を渡すまいと、すかさず反撃に出る。2回表、我孫子フラワーズの先頭は4番の花嶋が打席に立ち、4球目の甘く入った直球を強振すると野平の足元を襲いピッチャー強襲の内野安打となり先頭打者が出塁する。続く5番の織田はストレートに振り遅れ空振り三振に倒れるも6番小澤の3球目、ファーストランナーの花嶋がスチールを決め同点のランナーを2塁に置いた。打席の小澤はファールで粘り野平が投じた5球目、振り抜いた打球はレフト前へ落ち2塁ランナーの花嶋が生還、1-1の同点に追い付き我孫子フラワーズが試合を振り出しに戻す。
互いに試合序盤から好投手を攻略し打ち合いの展開も予想されたが、ここから両先発投手が尻上がりに調子を上げ、試合は膠着状態に。NINE SENCEは2回裏に先頭バッターの大胡がフォアボールで出塁、すかさず盗塁を試みるがキャッチャー牧島が落ち着いてストライク送球を見せこの回は無得点。続く3回裏も1アウトから大野がライト前で出塁するが、続く角井は見逃し三振、同じく1塁ランナー大野もスチールを仕掛けるが2回に続き我孫子フラワーズ牧島が好スローイングを見せ三振ゲッツーと、2度にわたり足を絡めた攻撃を封じられる。
一方の我孫子フラワーズは守備からリズムを作り、3回表は9番森川が7球粘ってフォアボール、先頭に返り北澤(京)の打席でこちらも足で仕掛け森川が盗塁を成功。しかし後続が続かずこの回も無得点で、4回表も前のイニングと同様に後続が続かず無得点と両チームチャンスを作りながらあと1本が出ずスコアボードに0が並ぶ。
NINE SENCEは4回裏に5番大澤、6番大胡の連続安打で得点圏にランナーを置くが、伊藤はこのピンチに動じずこれぞエースの貫禄示す投球を披露した。続く7番安藤はファーストゴロで2アウト、しかしランナーはそれぞれ進塁し2アウトランナー2,3塁とピンチは更に広がるが、8番大関に対してはストレートで押し切り最後は空振り三振に仕留めこのピンチを0点で切り抜けた。このシーンを振り返ると、技術面以上に精神面で伊藤が優位に立ったと言えるだろう。その背景には昨季からの戦いにドラマがあり、我孫子フラワーズは2020年シーズンあと一歩のところでファイナル進出を逃した。悲願のプロスタ進出を決める試合で伊藤は先発を任され、5回まで好投を続けるが6回に3連打を浴びて1アウト満塁ながら志半ばでマウンドを降り、その回に奪われた1点が決勝点となった。伊藤は昨季のリベンジを果たそうと2021年はチームを幾度となく救い、我孫子フラワーズの絶対的エースへと成長した。各チームにはそれぞれ数々のドラマがあり、伊藤のこの日に懸ける想いに心を奪われるシーンでもあった。 そして試合はテンポよく進み、終盤戦へ突入する。5回裏、この回もマウンドに上がる伊藤は先頭バッターの9番稗田をファーストゴロに打ち取るも今日無安打の日下部に投じた71球目、日下部はやや高めに浮いたストレートを力強く振り抜いた。打球は勢いよくライトの頭上を越え、スタンドまではあと3m届かなかったが悠々と2塁へ到達、準決勝で劇的決勝弾を叩きこんだ日下部が勝負強さを発揮し、NINE SENCEはこの日3度目の得点圏にランナーを置く。ここで代表兼監督の北澤(京)は迷いなく弟のWエース北澤(玲)にスイッチ。今シーズンはリリーフとしての登板機会が増えたが、同学年の伊藤が作った試合を壊すまいと、このピンチを北澤(玲)は圧巻の投球で無失点に切り抜け、攻撃に望みを繋げる。
しかし我孫子フラワーズ打線も野平を攻略できず6回表は9球で終わり、7回表は野平の後を継いだ荒関が2アウト2,3塁のピンチを迎えるも0点で切り抜ける。NINE SENCE打線も伊藤の後を継いだ北澤(玲)が6回裏、7回裏と三者凡退で切り抜け、試合は1-1のまま規定により1アウト満塁のタイブレークで勝敗を決することとなった。
タイブレークの先攻は我孫子フラワーズ、途中出場の三浦がバッターに入る。この場面は戦略面が勝負を分けることとなるが、我孫子フラワーズベンチの選択はヒッティング。三浦は初球から積極的に打ちにいくが、打球はショート正面に転がり万事休す。ショートを守る大胡は落ち着いてホームへ送球し2アウト、キャッチャーの石川も丁寧にファーストへ放り3アウト、最低でも1点が欲しい局面で我孫子フラワーズはホームゲッツーに終わりこの回まさかの無得点で終わる。
NINE SENCEはこれ以上ない形でピンチを切り抜け、ベンチの盛り上がりもこの日最高潮に達した。そして我孫子フラワーズは絶体絶命のピンチを迎え、このイニングも北澤(玲)がマウンド上がる。1点入れば試合終了、平常心でマウンドに立つことが難しい局面の中、北澤(玲)は動揺からか3球連続でボールを与え、途中出場でマスクを被る女房役の鳥海がすかさずマウンドへ駆け寄った。ここで落ち着きを取り戻した北澤(玲)は2球続けてストライクを取り、今度はバッターの日下部が追い込まれる。1球ファールで粘りこの日北澤(玲)が投じた34球目、三度球場内の誰もが固唾を飲んで見守る中、最後は無情にも変化球が外へ大きく逸れ押し出しのフォアボール。NINE SENCEが2-1とサヨナラ勝利を飾り、参戦初年度でVictoriaリーグ2部の頂点に立った。 MVPには初回のタイムリースリーベースに加え、扇の要として1失点で切り抜けた活躍が評価され、キャッチャーの石川が選ばれた。 ゲーム後、この日はベンチから戦いの行方を見守った代表の林田がインタビューに答え、Victoria初出場・初優勝の偉業達成について問われると「正直ビックリしています!みんなも頑張ってくれて結果が付いてきて良かったです!!」と晴れ晴れしい笑顔で答え、続けて2021年シーズンについて振り返ると「今シーズンは飛躍の年となって勝った試合も多かったので、来シーズンも結果を残せるように頑張ります!」来季最高峰リーグに上がる意気込みを元気に語ってくれた。
そして大会MVPの石川も試合を振り返り「苦しい場面も多かったが、ピッチャー陣がよく頑張って投げてくれたと思います」と好投を見せた投手陣へ賛辞を贈った。最後まで激闘を戦い抜いた相手チームの印象を問われると「予選も戦っていて主力メンバーも打っている人も同じでしたが、前回同様に接戦になり今回もキツかったですね」と冷静に試合を振り返った。
一方敗れはしたものの最後まで諦めず戦い抜いた我孫子フラワーズにはこの激闘を称え、胸を張って来シーズンを迎えてもらいたい。リーグ戦3年目の来季は最高峰リーグ昇格となるが、2年連続のプロスタ進出、そして頂点奪取に期待を寄せる。
【MVPインタビュー】#23 石川 直樹
【監督インタビュー】#30 林田 明
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